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中国、東南アで鉄道着工
「一帯一路」構想へ着々 日本経済新聞 2015/12/03(木)

第一弾 ラオス南北路線7400億円

raosu.jpg【ビエンチャン=京塚環、北京=阿部哲也】中国南部雲南省の昆明からラオスなどを経由してシンガポールまでを鉄道で結ぶ中国政府の支援による大規模事業が動き出した。ラオスの首都ビエンチャンで2日、ラオス国内を通過する総事業費約60億ドル(約7400億円)の長距離鉄道の建設起工式が開かれた。中国の習近平指導部が掲げる「一帯一路へ新シルクロード構想)」にもとつく東南アジアでの鉄道事業第1弾となる。

 式典ではラオスのチュンマリ国家主席が舞台上に置かれた白い砂を大きなスコップですくってみせた。建設を担う中国国有大手の中国鉄路総公司の盛光祖総経理は「中国国内での鉄道建設の信頼ある実績をラオスで生かしたい」と述べた。

 今回着工したのはラオスにある中国国境の都市ボーテンからビエンチャンを結ぶ総距離約430キロメートルの路線。鉄道は貨物と旅客の両方の輸送に使われる。

 最高時速200キロメートルの高速鉄道で、中国鉄路は2020年中の運行を目指す。ラオスでは過去最大規模のインフラ整備案件となる。

 中国は総事業費の7割にあたる約42億ドルを負担し、残り約18億ドルは借款で対応する破格の条件を示した。事業はもともと10年にラオスと中国の2国間で建設に合意した。長く棚ざらしにされてきたが、中国側が好条件を示して一気に具体化が進んだ。

 中国が新シルクロード構想の具体化を急ぐ背景には、米国主導で大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)の存在がある。経済的な孤立を招きかねないことに危機感を強める中国は、鉄道や道路の建設で周辺国との関係を強め、政治・経済の両面で米国に対抗する考えだ。東南アジアの縦断鉄道ではラオスから先のタイ、マレーシア、シンガポールにも中国は新たに鉄道を敷設したい考えだ。

 ただ、拙速な計画の具体化にはリスクも指摘される。ビエンチャンからの接続を計画するタイでは、総距離874キロメートルの路線で昨年末に中タイ間で基本合意した。ところが着工は当初の15年内から16年5月ころに遅れる見通しとなった。中国側が事業費の見積額を当初より25%高い5千億バーツ(約1兆6500億円)に引き上げたためだ。

 中国はタイにあくまでも年内の着工を求めるが、タイのアーコム運輸相は「正式合意の前に中国は詳細なコスト構造を提出すべきだ」とつっぱねた。

 ラオスの事業も、人口700万人弱、1人当たり国内総生産(GDP)が2千ドルに満たない国としては投資額が大きすぎるとの指摘がある。鉄道の保守・整備など完成後の管理にも不安が向けられている。

▼新シルクロード構想 中国の習近平国家主席が提唱する構想で、中国を起点に中央アジアから欧州に至る「陸路」と中国沿岸部から東南アジアや中東を経由する「海路」を用い、アジアと欧州を結ぶ貿易圏のこと。中国では二帯一路」と呼ぶ。陸路では鉄道網、海路は港湾などのインフラ整備を進める。中国から欧州まで幅広い地域をカバーする一大経済圏となる。
2015-12-03